前書き

 このSSは、ホロウで得られた断片的な情報を元に構成したつもりです。
 ですので、設定面等でおかしな部分は多々あると思いますが、一つ我が子の学芸会の劇でも見るぐらいのおおらかな心を持ってご覧ください。
 ちなみに、Fateルート後のお話のはずです。



    倫敦塔顛末



 ――ロンドン塔。
 言わずと知れたイギリスが世界に誇る、世界遺産にも登録されている観光名所である。
 そのロンドン塔だが、その外見は通常日本人が「塔」という括りから反射的に思い浮かべる垂直に伸びた線のような外見とは大きくかけ離れている。
 首都ロンドンをまっぷたつに横断するテムズ川沿いに建てられ、その周囲を堀と石壁の城壁に囲まれた堅牢なお城こそ、ロンドン塔なのである。そもそも、一般的に呼称される「ロンドン塔」という名称は愛称に近く、実際には「女王陛下の宮殿にして要塞」というのが正式な名称である。つまり、元々「塔」ではないのだ。そればかりか、本来の名前からわかるように長い時代の中でその役目を終えた気安く見てまわれるような観光名所でもなく、今もってイギリス王室が所有する現役の宮殿であり要塞なのである。
 そんなロンドン塔の歴史を紐解くと、宮殿にして要塞としてはいささか陰惨すぎる物語が浮かび上がってくる。
 1305年にはスコットランド独立の英雄ウィリアム・ウォレスが、1483年にはエドワード5世とヨーク公リチャードが、1535年には聖人トマス・モアが、1536年にはヘンリー8世の二番目の妻アン・ブーリンが、1542年にはヘンリー8世の五番目の妻キャサリン・ハワードが、1554年にはテューダー朝第4代女王ジェーン・グレイが、このロンドン塔の露と消えている。
 ロンドン塔はその辿った歴史を鑑みると、要塞にして宮殿ではなく高貴なる者を捕らえる監獄であり、断罪を与える処刑場であった側面の方がより色濃い事がわかる。
 それらの事実は現代の観光名所と半ば化しているロンドン塔にとってはあくまでも過ぎ去った歴史でしかない訳だが、同時にその事実が消えるわけではない。
 そして、その事実を思い出させるような凄惨な事件が現代に再び起きる事になるのだが、その事件を語るには少々時を遡らなければならない。
 時は、8月。
 霧の街ロンドンとしては、珍しく良い気候が続いていたうららかな日々の一日から話を始めようと思う。


   ・・・・・・・・


 8月、ロンドンのみならず北半球に住む多くの学生にとっては夏季休業の真っ最中であった。
 特に、ヨーロッパを初めとして西洋の学校は通常9月から新学期が始まるため、日本の学生がすごす課題やら何やらが色々と詰め込まれた休暇とも言えないような休暇とは違い、実に長く伸び伸びとした余暇を楽しめる学生生活においての最良の日々と言えるだろう。
 だが、それは夏の燦々たる日の光を浴びる事ができる地上の学校にのみ適用されるのか、人知れず時計塔の地下に設けられている日の当らない、魔術という神秘を学ぶ学び舎ではまた別の日常が流れているようであった。

「……はぁ〜」

 その学び舎の一室。
 明らかにその場所にも、季節にも合っていない豪奢な青色のドレスに身を包んだ麗人が万年筆を片手に深い憂いを帯びた溜息を漏らした。
 その装いたるや、ドレスのみならずオレンジ色がかった豪奢で豊かな金髪を服装同様に時代錯誤な縦ロールにしており、今から王室主催の舞踏会にでも出席するならともかく魔術師たるべく集まったこの学び舎では、普通に考えれば甚だしく場違いなのだろうが。何故かこの麗人が着ると、薄暗い地下に設けられた教室であるにも関わらず、ごくごく自然な装いであるかのように見えるから不思議であった。
 それは、その装いをした彼女自身がそのドレスにも負けないほど美しい女性である、という事実も大きく関わっているのかもしれない。彫りが深く派手な目鼻立ちは、まるで高級なビスクドールをそのまま等身大の大きさにしたように美しく、気高く整っていた。唯一人形との違いは、その身から発する強い生気に満ち溢れている事だろう。

「……どうしたのかしら、ルヴィアさん。あなたが溜息をつくなんて珍しいのを通り越して、天変地異の前触れかと心配になるのですけど」

 ルヴィアから少し離れた席に腰を下ろした、明らかに東洋系と思しき容貌をした少女が彼女に声を掛けてきた。
 こちらもまた、ルヴィアとはまた趣きこそ違うがかなり優れた容姿をした少女であった。東洋系らしく、顔立ちにこそルヴィアに比べれば派手とは言えないが、その一つ一つのパーツの美しさは引けをとるものではない。艶やかな光沢を放つ黒髪をツーテールに結んでいる姿は、些か幼さを残しているがそれも髪を下ろして後一年も経てば充分に改善される事はまず間違いはないだろう。
 こちらの少女の装いは、目の前の彼女に対抗するような真っ赤な長袖に、ミニスカートにニーソックス姿の現代的な装いをしていた。活動的な印象を与える少女には似合ってはいたが、やはり普通思い浮かべる魔術師とは大きくかけ離れている感は否めない。

「放っておいてくださらない。私(わたくし)、今あなたの相手をするほど暇ではなくてよ」

 挑発的とも取れる少女の言葉を、ルヴィアはそっけなく一蹴するとまた手紙に向き合った。そんな彼女の様子に少女が首を傾げた。自分の目の前にいる彼女が、自分の挑発を軽く受け流した事が信じられないらしい。

「まあ、その方が私としても平和で結構な話だけど。一体ここで何を書いているのよ?」
「なっ、なんでもありません。ミス・トオサカには関わり合いの無い事です」

 行儀悪く体ごと机越しに覗きこんできたトオサカの姿に、ルヴィアが慌てて手紙を机の中に隠して、あからさまに目を逸らした。
 その 「この件にこれ以上触れるな」 と言わんばかりのルヴィアの様子に、トオサカが絶好の獲物を見つけたハゲタカのごとく目を細めた。

「……ふ〜ん」
「な、なんですの、その意味ありげな視線は」
「もしかして、ラブレター?」
「なっ」

 トオサカのあまりに直球の問いかけに、ルヴィアは顔を一瞬の内に真っ赤にして言葉を失った。それはあまりに的外れの答えに驚いた訳ではなく、見事に図星を指された驚きと羞恥からであることは明白だった。

「あっ、ビンゴなんだ。ルヴィアったら見掛けによらず可愛い事するのね」

 トオサカが、口元に手を当てて意地悪そうに優越感の混じった笑みを浮かべた。

「なっ、なっななっな、誰がいつそんなものを書いていると」
「あのね。一行書くたびに盛大に溜息を吐かれたり、顔を赤面させてたらそりゃあわかるわよ」
「うっ」

 トオサカの指摘に思い当たる点があったのだろうルヴィアが、今一度言葉を失ったように声を詰まらせた。

「そもそも何でこんな所で書いてるわけ?  ご立派な豪邸を持ってるんだから、ゆっくり書けばいいじゃない」

 この時計塔で魔術を学ぶ学生の多くは、時計塔の用意した学生寮代わりのアパートに身を寄せるものが条件面等から大半だった。だが、ルヴィアもそしてトオサカもとある理由から時計塔近くに自ら家を借り住んでいた。
 したがってルームメイトが頻繁に立ち入るようなアパートに居を持っているなら兎も角、人目に晒されたくないならわざわざこんな不特定多数が利用する教室で書く理由はないはずだった。

「そ、それは、その。ほ、放っておいてください。私には私なりの理由があるんです」

 勿論、そんな事はトオサカに指摘されるまでもなくルヴィアにもわかっていた。だが、そんなリスクを犯してでも、どうしてもこの手紙を自分の屋敷で書く事ができなかったからこそこうやって、わざわざここで手紙をしたためていたのだった。
 ここ一ヶ月前ほどからルヴィアはずっと悩んでいた。いや、そんな言葉では言い尽くせないほど苦悩し、その豊かな胸を痛めていた。
 彼女は貴族である。貴族には、常に特権と共に義務がついてまわる。その一つが高貴なる血を高め残す事も含まれていた。誰よりも自分の高貴な立場に誇りと自負を持っているルヴィアも無論そのことに疑問を抱いた事もなく、年頃になればそれ相応の身分の者と添い遂げるのがごく当然の事だと思っていた。
 そんな彼女にとって信仰にも似た信念を揺るがすような相手こそ、まさに手紙の宛て先だった。
 高貴なる血など求めようもない平民。しかも同じ西洋人ですらない東洋人、さらによりにもよって彼女の家にとって因縁浅からぬ日本人なのである。普通に考えれば許される訳がない相手だった。
 だが、同時にルヴィアはその相手に信念も義務も越えて好意よりもずっと深い感情と、運命、いや確信に近い宿命すら感じてしまっていた。
 そんなどうしようもない板挟みの状態で彼女の苦悩だけが積み重なっていくというのに、肝心の相手といえば自分がいかに彼女を悩ませているのかわかっているのかわかっていないのか、それすら判然としない様子なのである。彼女に悩むな、というのが無理な話と言えるだろう。

「へ〜、そ〜、ふ〜ん」
「な、な、なんですの? 不快ですわ、今日はこれで失礼いたします」

 結局、その苦悩は相手の気持ちを確かめなければ乗り越えられないだろうという、結論に達したのが約一週間前。そして、ようやっとたどり着いたのがこの手紙なのだ。それを馬鹿にされるのはどうしても、ルヴィアには耐えられなかった。
 席を立ち上がりかけたルヴィアの腕を、笑いを噛み殺したトオサカが掴んで引きとめた。

「まあ、待ちなさいよ。家で書けないという事は相手ってのは身内なんでしょ?」
「し、しりません」

 ボッと、ルヴィアの顔が先ほど以上に火がついたように真っ赤に染まる。どうやら、即座に誰かの顔を思い浮かべたらしい。そして、強引に捕まれた腕を引き抜こうとしたが、トオサカがそれを穏やかに制した。

「だから、待ちなさいって。そういう事情なら手伝ってあげるっていってるのよ」
「な、な、なんですって」
「ただ投函するっていうのも、芸が無いでしょ。ここは一つ私が一肌脱いで上げるわよ」
「……ほ、本当ですの?」

 ライバルからの思いがけない提案に思わず、ルヴィアはぴたりと動きを止めて探るような声を出してしまった。

「ええ、勿論。こんな事で冗談何て言わないわよ。それにしても、ルヴィアがラブレターねぇ」

 自分の言葉にいままで我慢してきたものがぶり返してきたのか、トオサカは吹き出した。すねたような表情で顔全体を紅潮させるルヴィアの姿はいつもは見せないようなかわいらしさと愛らしさを発揮しているのだが、どうにもトオサカにはそれは笑いの衝動が突き上げてくるものらしかった。

「い、今、笑いましたわね、今」
「まあまあ」
「まあまあ、じゃあありませんわ、まあまあじゃあ」

 顔を真っ赤に染めて詰めよってくるルヴィアを、トオサカは子供をあやすような口調でなだめた。もっとも、そんな彼女の態度にルヴィアのボルティージはさらに高まるのだった。

   
    ・・・・・・・・・


 時間は夜の八時をまわる頃、彼女は時計塔から自宅への帰路を急いでいた。
 8時というのは、一般の学校ならば十分に遅い時間の部類に入るのだろうが、魔術師の養成学校である時計塔においてはまだまだ早い時間といってよかった。それどころか日々出される課題やら実習が終わらず、泊り込んでしまう学生も決して少なくはない。
 だが、こと彼女に限っては今だに時計塔で一夜をすごしたことは勿論、帰宅時間が9時を越えた事は一度もなかった。それは彼女の成績が常に首席を争うほど優秀だったからというのも勿論あったが、それ以上に彼女にとって魔術の勉強を途中で投げ出してでも家路につきたくなるほどの強力な魅力を放つモノが家で待っていてくれた事の方が大きな理由だった。

「ただいま〜」
「お帰り、遠坂」

 自宅のアパートメントの扉を開けると、すぐに「お帰り」の言葉と共に彼女の食欲中枢を刺激する匂いを嗅ぎつけた。行儀が悪いのを重々承知しつつ期待に胸を高鳴らせ、玄関からキッチンにそのまま顔を出した。

「士郎〜、今日のメインは何〜?」
「子牛のいい所が手に入ったから、それを香草でローストしてる。……それより、遠坂手ぐらい洗ってきたらどうだ?」

 キッチンには、エプロン姿がとても堂にいった男性が呆れたようにこちらを見ながら立っていた。
 彼女の魔術師としての初めて、そして今のところ唯一の弟子衛宮士郎である。もっとも、今現在は彼女自身が魔術の勉強に忙しく半ば閉店休業中、ほぼおさんどさんと化しているのだが。

「ええ、そうするわ」

  その言葉に素直に頷き、洗面所に向かった。

「ね〜、今から何か手伝う事ある?」

 廊下を挟んで少しばかり離れた洗面台で手を洗いながら、おさんどさんをしてもらって何もしないというのも気がとがめて大声でそう呼び掛けた。

「あ〜、そうだな〜。じゃあ、食器だけ出しておいてくれるか」
「はいはい」

 言葉通り料理は、もうほぼ出来上がっているのか、洗面所を出ると帰ってきた時以上の香りが漂っていて、彼女の空腹の腹を刺激するのだった。

「ご馳走様。いつもながらおいしかったわよ、士郎」

 予想の二割増しでおいしかった夕食をたいらげ、よいタイミングで出された食後の紅茶を飲みながら彼女は満足の溜息を吐いた。
 衣食住の食の部分だけとってみれば、彼女にとって士郎をこの倫敦まで連れ出してこれたのはまったく幸運の極みといってよい事だった。別に彼女が食事ベタという訳ではない。寧ろ、中華料理に限れば確実に士郎より腕は上なのは自他共に認める所だった。だが、時計塔でのしんどい授業や実習などを終えて帰宅してから、自分一人で食事を取るために毎日真面目に食事を整えていたか? となるとかなり話は変わって来ていただろうし、ならば外食に頼るとなるとこれまた具合が悪い。 ここはパリでも、ニューヨークでも、ブエノスアイレスでもなく、イギリスの首都ロンドンである。まったく、食事だけに限れば土地柄が悪すぎるといっても間違いはないだろう。

「お粗末様」

 そんな凛の満足げな様子に、士郎もキッチンで後片付けの皿洗いしながらまんざらではない様子で答えた。

「士郎、こっちに来てから洋食の腕が上がったんじゃない」

 前々から士郎の料理の腕は、本業の魔術の腕など比較にならないほど確かなものだったが、ここ最近はさらに磨きがかかっていて彼女の事前の予測を超える味を出してくることいっさんではなかった。

「う〜ん、そうかな。やっぱり、手に入る食材がどうしてもそっち向きだし、バイト先でも大分仕込まれてるからな」
「……バイトはどう、順調?」

 どこか探るように凛が問い掛けた。
 学校は9月から始まるため、特例で去年の内に在籍している彼女は別にして士郎は今現在学校には通っていない。一応、士郎もすでに入学資格は凛の弟子扱いでとっているため、問題はないのだがさすがに編入学を許されるほどの力は持ちせてはいなかった。9月の入学までの間、遊んでるのもなんだという事で、英語の勉強と支出ばかりが大きい家計を助けるためにアルバイトに出ていた。
 そのバイト先から士郎が仕入れてくる料理のレシピや紅茶の作法からみても、アルバイト先がかなり立派な家らしい事は凛にも推測がついていた。だが、彼女が士郎のバイト先について知り得ているのは実はそれくらいなものでしかなかった。
 そのバイト先というのが情報管理についてひどく過敏らしく、士郎は勤める際に家族にもその勤め先についての情報を漏らしてはいけないという事をまず確約させられていて、その辺彼女がどれだけ尋ねても士郎はしどももどろになりながらも未だに口を割ってはいなかった。そもそも、彼女にしてみればこのロンドンに何のツテもないはずの士郎が、自らバイト先を、しかも驚くような高待遇な整えた所を探し出してきた事からすでに驚きであり、不信極まりない事だった。

「ああ、皆良くしてくれるよ」
「そうなんだ、よかったじゃない。士郎の料理の腕も上がってこちらとしてもバンバンザイだし」

 こちらを安心させるように笑いながら答える士郎に、凛は諦めたように話を打ち切った。
 いくら不信極まりないバイトでも、今現在そのバイト先からでる破格といっていい給金は家計にとって欠けざる要素となってもいた。凛としても、下手に突っ込んでそれを失うのはどう考えても得策とは言えず静観しているのが現状だった。
 そんないつもと変わらないたわいもない会話をしつつ、彼女はテーブル越しに見える士郎の背中を何となく見つめていた。
 大きくしっかりと鍛えられた背中だった。日本でまだ学生だった頃、士郎を悩ませていた身長の低さは、ロンドンに来てからというもの、よほどこの国の水が合ったのか雨後のタケノコのように伸びていた。少し前まで、彼女とほとんど視線が変わらなかったというのに今では、視線を合わせようと思えば、彼が見下ろすか彼女が見上げるしかないほどである。
 士郎は、そのことを純粋に喜んでいるようだが、彼女は時々複雑な心境に陥るのだった。彼女にとってその事実を意識するということは、どうしてもあの時から過ぎ去った時間の長さを思い知る事に繋がるのだから。
 二人にとって共通の故郷である冬木市から文字通り勘難辛苦の末、彼女が士郎をこのロンドンまで連れ出してもうほぼ半年が経っていた。その生活のほとんど共有しながらも、二人は同居している訳ではない。士郎は、この部屋の隣部屋を別箇に借りて住んでいた。彼らの関係は、未だ魔術の師弟を越えるものではなかった。
 彼女は、士郎がたまの休日にイギリスの名所を巡っているのを知っていた。それも、ある英雄にまつわる場所ばかりを選んでいる事も無論承知していた。
 だが、それがどうしたというのだろうか。
 思い出の彼女と士郎との時間はあそこで終わって、彼女と士郎の関係は現在進行形で進んでいるのだから。焦る事なく、ゆっくりと時間をかけて(少々ゆっくりすぎるきらいはあるにせよ)新しい関係を築いていけばいいだけの事だと彼女は考えていたので、今の状況に不安を覚えたことはなかった。
 だから不意に、彼女が覚えた不安はそれとはまったく異なるものだった。
 目と鼻の先にあるはずの士郎の背中が彼女の視界の中で小さくなっていく、いや違うのだと彼女は知っている。
 彼女自身が遠ざかっているのだ。
 もう会えないのに。
 交わした言葉が果たされる事などない事を知っているのに。
 それ以上かける言葉もなく彼女は遠ざかり、彼は振り向きもしない。あんなに大きく頼もしかった背中が小さくなって、そして舞台の場面が切り替わるように消えた。

「士郎」

 音をたてて、椅子が仰向けに床に倒れた。
 その音に我に帰った時には、彼女は立ち上がり士郎の名前を呼んでいた。

「ど、どうしたんだ、遠坂?」

 切迫感すら感じさせる問いかけに、驚いた様子で士郎が振り向いた。

「……ああ、ううん。なんでもない」

 そんな漠然としただが間違いなく確かな不安は、彼の顔を見た瞬間日に晒せた水たまりのように後味の悪さだけを後に残して消し飛んでしまった。
 怪訝そうな士郎の表情に、彼女は椅子を引き起こしもう一度座りなおしながら内心苦笑を漏らした。
 疲れているのかもしれない、と彼女は思う。
 そうでなければ、あの時見たあの男の背中と士郎の背中が重なるわけがない。そんな訳がない、士郎は彼女の目の前で立って笑っているのだから、と。
 考えてみれば、ロンドンに着いてからというも、ほとんど休みなく彼女は魔術の勉強をしてきたのだ。そろそろ、休みをとっても罰も当たらないだろう。何といっても今は夏なのだから。しかも、彼女にとっては輝かしい10代最後の夏休みである。毎日毎日穴倉のような学び舎に篭って浪費するというのも考えものだった。
 一人うんうんと頷きながら、ふと思いついた自分の考えが、彼女には天啓のように考えれば考えるほどよい思いつきであるように思えて仕方なかった。
 一人鼻歌混じりにとめどなくバカンスの予定など組みつつ、クラスメイトの彼女の事を思い出す。もし、あの可愛らしい計画が上手く行くようだったら、彼女を一緒に誘ってやるのもいいかもしれない。何といっても、彼女はここロンドンでできた、色々と留保事項がつくもののたった一人の友人である事には間違いないのだから。
 突然また機嫌がよくなった師匠の姿を、紅茶のお代わりを出すタイミングを計りながら弟子が苦笑をしつつ窺っていることに彼女はまだ気がついてはいなかった。
 ロンドンにおける日々は、色々と煩雑さこそあれど、彼女にとってまず満足のいくものであった。


   ・・・・・・・・・


 イギリスにおける生活習慣として、外せないものがあるとしたらその一つは紅茶の時間だろう。
 起き抜け、朝食、昼前、午後、夕食、就寝前と計六回もの紅茶を楽しむ習慣が残っているほどだ。もっとも、さすがに「Tea Lover」と呼ばれる紅茶愛飲家でもなければ、律儀に日に六回ものその時間を楽しむイギリス人はそうはいないだろうが。
 だが、このロンドン市中心部からは少し離れた所に建つ豪奢な洋館では、その習慣は残っているようで。昼少し前のどこか半端で緩やかな時間の中、洋館の裏側に広がるよく手入れされた広い英国庭園の中庭に設えられた東屋からは、紅茶のいい香りと食欲を誘う甘い匂いが漂っていた。
 東屋に置かれた椅子にゆったりと座った女主人のテーブルの上には、香りの元である紅茶が入ったポットと、焼きたてと思しきスコーンがバスケットに小山して置かれていた。 この館の女主人はイギリス人という訳ではなかったが、イギリスに住むようになってからは楽しみとしてこの習慣を取り入れていた。特に、今自分の横に控えている男性が執事見習として勤めるようになってから、その楽しみは彼女の一日の中でも特別なものになっていた。
 元々、彼女はかなり古風な考え方をする処がある人間だった。身近な伝統や慣習というモノを重んじるばかりではなく、常日頃から身に纏う服飾も18世紀ごろのもので統一し、それを家の中でも外でも崩す事はい。それに合わせて豊かな金髪は時代錯誤とは知りつつ縦ロールに纏めてもいた。
 彼女のたおやかな指が、青み掛かった白磁のティーカップを持ち上げ、紅茶を花が開いたような愛らしい唇に一口含む。
 美味しい、彼女は欲目を抜きにしてもそう感じた。カップから昇る香りは澄み渡って彼女の鼻腔を心地好く刺激してくれた。温度は適温より少し高め、口に含んだ紅茶からはすこし渋みを残した味もケチのつけようがなくすべて彼女の好み通りに淹れられていた。
 だが、今はそれを心から楽しんではいなかった。彼女は、一つ小さく深呼吸をして、これから自分が言うべきセリフを暗唱した。

「シェロ」

 彼女らしくなく心持ち緊張してその名を呼ぶ。

「御用でしょうか、お嬢様」

 彼女の斜め後ろに3歩ほど離れて立っていた男が、少々発音が悪い英語で即座に答えた。彼女の服装に合わせるようにやはり少々時代がかった黒白の燕尾服に身を包んでいた。
 中肉中背ながら服の上からでも、彼の体がしなやかな鋼のように鍛えあげられているのがわかった。薄い赤銅色の髪に下にはまだずいぶんと幼さを残した堀の浅い東洋系の容貌をしていた。
 東洋人、しかも日本という辺境の島国出身の彼には無論「シェロ」という愛称以外に立派な名前をもっているのだが、彼女にはいささか呼びにくいためもっぱら館の中では愛称で呼ばれるのが常だった。
 ちなみに彼にはその外見に似合わず器用な所があり、先ほどの紅茶を始めてとしてお茶のお供のスコーンも彼のお手製だったりと、今や執事見習なのかコック見習なのかわからない有様だった。

「ええ、ちょっとお使いに行って来て欲しいのだけど」
「はい、どちらに伺えば宜しいのでしょうか?」
「ロンドン塔です」
「ロンドン塔、ですか?」

 シェロが怪訝そうな表情を浮かべた。
 執事のお使いで、観光名所に赴くというのに奇妙さを感じたらしいが、それぐらいは彼女には織り込み済みであった。

「ええ、あなたと同じ日本人の女性が手紙を持っています。それを受け取ってきて」
「……はい」

 彼女が続けた言葉に、彼は己の主人が持つ裏の顔にして本職を思い出して今までの怪訝そうな表情を、緊張感すら漂った厳しいものに変えた。
 東欧の名門貴族であるこのエーデルフェルト家の起源が魔術師であり今現在もその技を今に伝えている事は、いくばかりか裏の事情に精通したものならば知らない者はいない。そして、その例に漏れず今現在の当主である彼女も優秀な魔術師であった。
 その彼女が、わざわざ発達したロンドンの公共郵便機能を使わず、人伝いに手紙を受け取るという事はそれなりの意味があると考えるに至るのはごく当然の帰結だった。

「そして、その手紙を誰もいない所で開封して内容をお読みなさい」
「なんでさ?  い、いえ、何故で御座いましょうか?  お嬢様宛てのお手紙ではないのですか」

 こと魔術に関わるものであるなら、身内であれそうおいそれと他人の手に委ねる事など考えられないことだった。しかも、わざわざ人の手を直接かいして届けられた手紙というなら尚更の話だろう。 それをその場で開いて読めというのだから、彼が驚くのも無理のない話だった。

「……シェロ。その口癖は優雅とは言えませんと、最初に教えたはずですよ」

 大人に話の矛盾点をつかれて拗ねた子供ように彼女は顔を背けた。そして、驚きのあまりシェロの口をついて出た日本語の響きを不機嫌そうに顰めた。

「申し訳御座いません」
「まあ、いいでしょう。今後お気をつけなさい。そ、それと、手紙の件はそれで構わないのです。あなたが、その手紙を読む事が重要なのですから」

 慌てて頭を下げた彼の方に、向き直りもせず彼女はかなりの早口でそう付け加えた。

「はっ、はぁ?」
「それと、いいですか。その手紙をけっして手紙を受け取った女性の前で開封してはいけません」

 そこが最重要事項だと言わんばかりに、彼女はようやっと振り返ると口調を強めた。

「はっ、はい」

 何だかわからないがいつもは透けるように白い主人の頬が、普段より紅潮しているのに彼は気がついていた。その事をいぶかしく思いながらも、主人の美しい顔がまるでこちらに挑みかからんとせんばかりの迫力に満ちていたので口には出せなかった。
 彼は、そのまだ短い人生の中で女性がこの手の顔をして何かしらの要求をしてきたら、自分にははね除ける術などない事を膨大な後悔とため息のはてに悟っていた。

「誰もいない所で、大事に、いいですか、大事にお読みなさい。宜しいですね」
「か、かしこまりました」

 深深と頭を下げて了承の意を伝える彼の姿に満足したように一つ頷いて、彼女は細々とした指示を与えた。それを聞き終えて、再び一礼をしてから遠ざかるシェロの背中を彼女は視界から消えるまで眺めていた。
 思い出すのは、あの出会い。あの時も彼女が見ていたのは彼の背中だった。

 彼女が当主を務める東欧貴族の名門にして、魔道の名門でもあるエーデルフェルト家には敵が多い。というより、見渡す限り敵しかいない。
 本来魔術師はその姿と神秘を隠し、社会に潜む。己の理想のためにのみその神秘を用い、余計な戦いを行なわない。ある意味究極の個人主義者の集まりといってもいい。
 だが、その中でエーデェルフェルト家だけは異端。ありとあらゆる戦いに横から身を投じる。ある時は名誉のため、財産のために。だが、その一番の大きな理由は戦いの悦楽のために身を投じた。かの家が、「この世でもっとも高貴なるハイエナ」と称される由縁である。
 その日、彼女が通う時計塔からの帰り道で彼女を襲撃したのはそんな戦いの中でとりこぼした者達だった。
 数は三人。その全てが魔術師、だがその腕前はとても一流ともプロとも呼べるものでもない三流以下。一流ならば、深夜といってもロンドンの街中で襲いかかるなどといった杜撰な極まる計画など立てないし、実行に移すなど埒外の事だったろう。周到に罠を張り、そこに誘き出して確実に仕留めるそれが魔術師本来の戦い方。本来なら、その襲撃は彼女の身にかすり傷の一つもつける事ができずに終わっていただろう。
 だが、偶然という名の気紛れな神は、その時彼らに一方的な肩入れをしていたようだった。彼女はその時、その身に宿す魔力のほとんどと、外出する時は常に身に付けているはずの彼女の主力武装となる魔力を込めた宝石を一つも持ち合わせていなかった。
 それというのも、彼女が通う時計塔にて今期の主席の座を争う少女とちょっとした魔術理論の違いについての論戦から、何故か教室まるまる一つを焦土にかえるほどの本格的な魔術闘争まで発展したからに他ならなかった。
 それでも彼女は、襲撃者の内二人までもその手で撃退してみせた。
 そして、今まさに彼女と襲撃者の最後の一人が路地裏で対峙していた。彼女の後ろと左右には彼女の身長の二倍ほどはあるビルの壁がそそり立っている、つまり彼女は路地裏の一角に追い詰められていた。
 50メートルほど離れて対峙している襲撃者の最後の一人を、彼女は初めてまじまじと見た。
 顔こそ、両目と口周りの部分を残してすっぽりと包む真っ黒な覆面で覆われていて窺えないが。彼女は男を、貧相な男だと断じた。そして、それが彼女の闘争本能にさらに火を焚き付けた。彼女の背負うエーデェルフェルト家の名にかけてこんな所で、あんな男の手にかかる事など甘受出来る訳がなかった。
 いくばかりかの逡巡の末の対峙を終えて、痺れを切らしたのか襲撃者の足が地面を蹴り、彼女に踊り掛かってきた。男の手には、分厚いコンバットナイフが握られていた。先ほどまでの攻防で、己の魔術をかわされ、逆に利用すらされた男の頭の中にはすでの魔術行使という選択肢は残ってはいないようだった。
 10歩。
 彼女はそう目算をつけた。あと、10歩男の足が進んだら最後の魔力を解き放つのだと決めた。
 彼女は男の歩数をじっと数える、8歩、7、6、5、4。男の足が3歩目を踏みかけた所で、彼女の目算は唐突に終わった。男が何かにはじき飛ばされるように大きく後ろに飛びず去ったのだ。

 剣がささっていた。

 近代戦争とは明らかに無縁な、大きく飾り気がなく無骨でありながらただそれゆえに美しい両刃の剣。それが忽然と空から飛来し、彼女と男の間を引き裂くようにアスファルトの地面に突き刺さっていた。
 あまりに非現実な光景。ありふれた路地裏は、たった一本の剣の前にその様相を一変させていた。それは、この国最古の英雄談の始まりの光景を酷似しているようで、彼女は目を離すことはできなかった。
 だが、不意に彼女の視界から光が奪われた。壁が出来た、と彼女は一瞬誤解をする。だが、目が慣れてくればそれが壁ではなく人の背中である事がすぐにわかった。
 身長はたいして高くはない、彼女の頭一つぶんほど高いぐらいでだろう。だというのに、その背中はひどく大きく彼女には見えた。
 襲撃者はといえば、ただ突然の乱入者に戸惑い、迷っていた。
 目の前にあるのは、幸運という移り気な奇跡が幾重にも折り重なった千載一遇の好機。同時にこの好機を逃せば二度とこのような状況を作り出すのは不可能である事は襲撃者の男が一番思い知らされていた。そればかりか、今度はこちらが狩られる立場にすらなりかねない。あのエーデルフェルト家の当主が自らの命を狙われて、笑って許すなど到底考ええないことであった。
 ここで、この場で殺(や)らなければ男のターンは否応なく終わるのだ。
 だが、その一歩が踏み出せない。
 目の前の彼女を背にしている男と目の前に突き刺さっている剣の間に関係があるかどうかはわからない。だが、目の前に突き刺さっている剣の意味だけは嫌というほど襲撃者である彼にはわかる。
 もの言わぬはずの剣がその姿だけで雄弁に恫喝と警告を謳っていた。
 もし、その場から一歩でも前に出れば間違いなく剣は今度は地面ではなく彼に降りかかってくるだろう。そして、残念ながら襲撃者の彼にはそれを回避して彼女に到達できるという自信を持ち合わせはいなかった。
 それに、そもそも目の前の男も、彼が彼女に襲い掛かるのを黙って見過ごしてくれるとはとても思えなかった。
 じりじりとした焦燥の末の決断は思いの外早かった。
 襲撃者は身を翻した。悲願の達成より、自己の安全を優先した事は火を見るよりも明らかな事だった。
 遠ざかる襲撃者の姿に、ようやっと男は安堵の溜息を一つ付いて降りかえった。
 それでも、彼女は茫然自失の状態で男を見ていた。何か言わなくてはならないと、理性は訴えかけてくるのだが、体がまるで反応しなかった。
 男はといえば、そんな彼女の様子に戸惑ったように、かなりたどたどしい英語で一生懸命話し掛けてくる。そんな男の様子に、彼女は先ほどまでのギャップに思わず顔を綻ばせた。
 その瞬間、男は笑う。子供のように何も飾らず、彼女が笑ってくれたのが嬉しくて堪らないといった感で笑った。
 彼女の心臓の鼓動がドンと一つ開幕の合図のように鳴るのを、彼女は確かに感じた。
 すでにその身を縛っていた呪縛はない、彼女はたおやかな右腕を手の甲を見せて男に差し出す。だが、男はといえばその動作に今度は戸惑ったように、差し出された右手と彼女の顔を間で忙しく行き来させるだけだった。
 やれやれと彼女は軽い落胆と共に思う。
 差し出された女性の手を放置するなどといった無作法を働くなど、彼女が思い描く紳士ならば考えられない事だった。だが、仕方ないと彼女はすぐに覚悟を決めた。少々時間は掛かるのだろうが、躾けていけばいいだけのことなのだからと。
 今思い起こしてみれば、この時にはすでにこの出会いが運命である事を認め、今日という日を迎える事に知らず知らずの内に彼女は決めていたのだろう。

 彼女の思考が不意に途切れる。
 言葉に寄ってではなく、皮膚に冷水を垂らしたような感覚が彼女の中を縦横に走る魔術回路を通じて伝わったのだ。
 彼女はおもむろに立ち上がると、館に向かって歩き出した。そう、彼女はこれからあの時感じたものを形にするのだ。観察の時間は終わり、決断も下した、あとは実行があるのみであった。

    ・・・・・・・

 地下鉄の駅を降り、城壁のアーチを抜け、ロンドン塔の心臓部にして、ロンドン塔そのものといってもいい「ホワイトタワー」に彼は足を踏み入れた。ちなみに、その中身は今は主にロンドン塔の歴史などの展示室となっている。本来なら観光客で溢れているのだろうが、平日の午後、12時をすこしばかりまわったばかりにしては珍しく回覧客は彼を含めても2・3人しか見受けられなかった。

「え〜と、日本人女性、日本人女性」

 彼は、その重厚な歴史を感じさせる佇まいに感心しながらきょろきょろと辺りを見回した。
 その姿は、どう見てもおのぼりさんの観光客にしか見えないが、観光客としてここに訪れた訳ではなかった。そもそも、時代がかった黒白の燕尾服姿というのは観光客にしては違和感があるだろう。彼は、ちょっとした数奇な偶然の末雇われたアルバイト先の主人から用事で、ホワイト・タワー内にあるセント・ジョージ礼拝堂で人との待ち合わせで申し付かって訪れていたのだった。
  その相手というのが主人曰く、「すぐにわかりますわ。貴方と同じ東洋人で女性、良くも悪くも何かと目立つ人ですから。それと、きっと何か赤いモノを見つけているでしょうし」との事だった。
 彼としては、主人が何故か腹ただしげだったのと、その文句の中の「赤いモノ」という単語に何とも言いようもない不吉な感じを受けたのだが、根拠があるわけでもないので黙っていた。
 腕時計を見ると、約束の時間まであと五分少々あった。さて、どうして時間を潰そうかと彼はセント・ジョージ礼拝堂の高い天井を見上げた。

「士郎?」
「えっ、遠坂。なんでここに?」

 呼ばれるはずのない名前で呼ばれて衛宮士郎が振り返ると、そこには良く見知った女性がやはり驚いた表情で立っていた。
 もはや、彼女のトレードマークと化している真っ赤な上着に、ミニスカート。上品に整った容姿に、艶やかな黒髪にはお決まりのツーテールの髪型。
 見間違える訳もなく、そこには彼の魔術の師匠遠坂凛その人が立っていた。

「そういう貴方こそ、どうして?」
「い、いや、俺はバイトのお使いで」
「お使い? お使いで何で観光名所に来てるのよ」

 士郎の答えに、凛が首を傾げた。

「い、いや、俺もよくわからないんだけど。ここで手紙を受け取るのが仕事なんだよ」
「……手紙を受け取る?」

 今度は凛の表情がはっきりと強張ったのがわかった。

「ああ、確か目立つ日本人女性がもっ、てるって……。まさか、遠坂の事じゃないよな?」
「……はははは、いやね〜、そんな訳ないじゃない」

 いくら世間は狭いと言っても、そこまでの偶然などないはずだという期待と、不安と込めた士郎の問い掛けに、凛が何故か目を逸らして笑いながら答えた。だが、その答えとは裏腹に凛の声は段々と小さくなり、顔はしまった、と言わんばかりに歪むのが見て取れた。

「だよな〜、まさか、そんな偶然」
「そうよね〜。あははははは」

 ひとしきり二人で乾いたような笑いを上げると、くるりと凛が士郎に背を向けた。そして、明らかに紙を引き裂いたような音が聞こえた。

「って、遠坂何してるんだ?」
「まあ、いいじゃない。それより、せっかく来たんだし。ロンドン塔観光と洒落込みましょ」
「えっ、い、いや、俺バイト中だから」

 士郎の追及をさらりと一蹴すると、凛は士郎の腕を抱え込んだ。抱え込まれた腕にあたる柔らかな感触に頬をすこし赤く染めながら、士郎は戸惑って腕を振り解こうとした瞬間だった。

「ミス・トオサカ、何をなさいますの」

 絶叫じみた大声が轟いた。

「えっ? お嬢様、何でここに」

 そのどう考えても聞き覚えのある声に士郎が振り返ると、あにはからんや思った通り透けるような青いロングドレスを身にまとったバイト先の女主人ルヴィアゼリタ・エーデルフェルトが全身を震わせ仁王立ちでこちらを睨みつけていた。
 しかも、その視線の先にいるのは士郎ではなく、何故か遠坂凛、その人であった。その凛はというと、驚いた様子もなくごく自然にルヴィアと相対していて、士郎は一人困惑の度合いを強めた。

「ルヴィアさん、ごめなさい。約束は果たせませんでした。この通り、手紙がバラバラになってしまいましたから」
「……あ、貴方、今、何をしたか御自分でわかっていて」

 凛の両手からハラハラと紙くずが零れていく。ルヴィアのいつもなら小川のように流暢なクイーンズイングリッシュが震えていた。

「ええ、勿論。それより、貴方こそわかっているのかしら、ここにいる衛宮士郎が私の弟子である事を」
「なっ?  それはどういう事ですの?」

 ルヴィアの詰問に、悪びれるどころか堂々と胸を張って答える凛にルヴィアの方が反対に驚いて問い返した。

「そういう事も、どういう事もそのままよ、ここにいる衛宮士郎は私の弟子。要するに頭の先から足の先までぜ〜んぶ私の物ってこと、貴方が割って入る余地なんてこれっぽっちもないってことよ。ねっ、士郎?」
「お、おい、遠坂」

 凛は抱え込んだ士郎の右腕をさらに強く引き寄せて、士郎に蕩けるような笑みを浮かべた。もっとも、当の士郎といえば訳もわからず目の前で始まった舌戦に困惑するばかりでそれどころではなかったのだが。

「シェロ、それは本当の事なのですか?」
「えっ、いや、うん。そう、なのかな?」
「そうですか、そういう事ですか」

 不意にルヴィアの声が平静なものにとってかわった。だが、その声は何故か先ほどまでの激情がほとばしるものよりずっと士郎の心胆を冷やした。

「ごめんなさいね〜、初めから知っていたら、こんな事にはならなかったのに」
「……やはり、貴方とはこうなる運命でしたのね」
「どうやら、そうみたいね」
「私は貴方を倒して、シェロの目を覚まさせて上げます」

 ルヴィアが、ご自慢のアタッチメント式になっているドレスの両袖を引きちぎるように外した。すでに、彼女のシラウオのような白い右腕には魔術刻印がらんらんと青白い光を放ち浮かび上がっていた。

「上等」

 凛の啖呵に答えるように、彼女のしなやかな右腕にも聞こえるはずもない機動音を確かにさせて、深紅の光を放つ魔術刻印が浮かび上がった。

「ちょ、ちょっと待て、二人共何が何だかわからないぞ」
「「貴方は黙ってなさい」」

 ただ一人事の成り行きがわからず困惑した士郎の静止は、二人同時に瞬時に切って捨てられた。

 ロンドン塔にありし日々を思い出したように、物騒な音が鳴り響いていた。
 長い歴史を誇り、建物それ自体が文化遺産であるロンドン塔の石壁には、ガント打ちによって無数の野球ボール大の凹みが穿かれている。もちろん、そればかりではなく魔力を込めた宝石の投擲により小規模ながらクレーターすら出来上がっていた。
 唯一の救いがあるとすれば、さすがに両者共最後の理性だけは捨てていないのか、約一名を除いては被害者は出てはいない事だろう。

「はあはあはああはああ」
「はあはあはあはあはあ」

 二人とも吐き出す息は荒く、お互いの自慢のヘアースタイルは半ば崩れ、身にまとった衣装は汚れ、破れている。周りの状況と合わせてみると、天災からの避難民のような有様だが、その両目に宿した燃え上がるような闘志の火はお互いいささかの衰えも窺うことはできなかった。
 士郎はといえば、散々な有様の二人よりさらに輪をかけてひどい姿でぐったりと力を失いヘタリ込んでいた。無論、彼が何もしなかったという訳では決してない。彼のわが身を顧みない活躍がなければロンドン塔の被害は3割はましていた事は疑う余地のない事実だった。
 もっとも、同時にそれが彼のできうる限界でもあった。優秀な魔術師達が世界中から集まる時計塔で、首席を奪いあう二人の魔術師の間に、具体的には卓球のラリーのごとくガンドが飛び交う所に力ずくで止めに入れというには、さすがに見習いの魔術師である士郎にはかなり荷が重かった。

「こっちです」

 不意に第三者の声と共にどたどたと、慌ただしくこちらに近づいてくる靴音が聞こえた。

「警察?」
「官警ですの?」

 まだ目を凝らせば見える程度の大きさでしかないが、4、50人の揃いの制服を着た集団が足音も勇ましくこちらに駆けよってきていた。その特徴的でロンドン市内で見慣れた制服は、間違いようもなくロンドン市警のものだった。
 正直、その瞬間士郎が覚えたのは安堵感だった。
 よく考えてみれば、ロンドン塔などという世界的に有名な観光名所でこれでけの騒ぎを起こせば警官が束になって押し寄せてくるのは必定だった。
  この場の騒乱を収める事もできず、国家権力にすがるというのは正義の味方を目指すものとしては軟弱極まりないが、さすがにこの状況は彼の分を超えているように思えてならなかった。

「ちいっ、士郎。こっち」
「へっ?」

 だが、当の彼女達は軟弱とはあまりにも縁遠い性格の持ち主であるようだった。
 凛は、舌打つを一つ鳴らして茫然とほうけていた士郎の手を握りると、近づいてくる足音とは逆方向に走り出した。必然、手をがっしりと握られている士郎も走らざるをえない。

「早くする」
「あ、ああ」
「こら、ちょっとお待ちなさい」

 そして、当然のようにそれにルヴィアが続き、先ほどまでの魔術闘争から、いつの間にか今度は逃走劇へと一変したのだった。
 もちろん、逃げているのは魔術師、それも飛びきり生きがよくて優秀な魔術師が二人並んで逃げているのだからまともなものになるはずもなく。そこから先は、無茶をさらに三乗くらいはしたような逃亡劇とあいなった。

「待て」
「逃がすな」

 絶え間なく後ろから浴びせられる怒声など一切聞き流し、スタッフオンリーと書かれた立て札など当然のごとく無視、行き止まれば引き返すのではなく強引に道を作り、追跡者を阻むために明らかに年代モノの文化遺産を含め備品らしきものはすべて追跡者を阻むバリケードと化した。
 もちろん、それは両アクマの所行ではあるのだが士郎も罪なしという訳にはいかないだろう。物の構造を即座に理解できる彼が的確に脆い部分を指示しなければ、こうも見事に破壊活動が進行できなかっただろう。もっとも、正確に言えば彼は 「指示させられた」 というべきではあるのだが。

「ああ、もう。頭が悪いんじゃなくて。上に逃げてどうするおつもりなの?」
「うっさい。じゃあ、ついてこなければいいでしょうが」

 ロンドン塔の四つある砲塔の一つの階段を駆けあがりながら、彼女たちはいまだ舌戦を続けていた。あれだけ、息のあった破壊活動及び妨害行動をこなしながら、二人の間に湧き上がった抗争の火種は未だ鎮火の様子をまるで見せない事に、士郎は呆れるよりもう感心してしまうほかなかった。
 もっとも、今の状況を鑑みてみればそんな悠長な感想を抱いている余裕はなかった。さすがは、名にしおうロンドン市警というべきだろうか、彼らは度重なる妨害にもめげず不屈の闘志を持って彼らをここまで追い詰めていたのだから。

「それでは、シェロと繋いでいる手をお放しなさい」
「い・や・よ」
「なんですって」
「ああ、そんな事言い争っている場合じゃないだろうが」

 当然の如く士郎がほとんど涙ながらに主張するが、これまた当然のごとく二人にはあっさりと聞き流される。
 そんなこんな繰り広げるうちに彼らの足はついに止まることを余儀なくされた。つまり、ロンドン塔最長部に到達したのだ。下にはさらに数を増やした警官隊が押しかけていて、さすがに正面突破は難しいと判断せざるおえなかった。階段に石壁を壊して造ったバリケードもそう長くは持たないだろう。

「本当にどうするおつもりですの、ミス・トオサカ? まさか、本当に考えなしに上がってきたなどといったら承知いたしませんわよ」
「うっさい、いいから黙ってなさい」

 ようやっと繋がれた手を解放されてその場にへたれ込む士郎と、こちらはまだまだ元気いっぱいと言わんばかりに目をいからせるルヴィアを放って、凛は窓から上半身を突き出して何やら一人頷く。

「まさか、遠坂。ここから飛び降りるつもりなのか?」

 そんな凛の様子に、付き合いの長さゆえか士郎がすぐにその意図に気がついてさらに顔を青ざめた。

「大丈夫よ。この程度の高さなら魔術をつかえばどうとでもなるわ」
「……あのな」
「……確かに、他に方法はありませんわね」

 凛の返答に、ぐったりと肩を落とした士郎とは裏腹にルヴィアはひとしきり思案の上頷く。

「なっ、ルヴィアまで」
「覚悟を決めなさい、士郎。さあ、行くわよ」

 ルヴィアが同意した事で退路を完全に断たれた形の士郎に、覚悟をほだす様に凛が一度離した右手を差し出した。  すでに魔術師として十分な力量を持つ凛とルヴィアはともかく、まだまだ魔術師として未熟な士郎はこの高さから一人で飛び降る術を持ち合わせていなかった。飛び降りるとなれば、凛の手助けを借りなければ大怪我ではすまないだろう。

「お待ちなさい」
「何よ、ルヴィア」

 士郎が逡巡などする暇もなく、ルヴィアが士郎と凛の間に体ごと割り込んできた。

「シェロの身を貴方ごときにまかせる事はできません。私がシェロと飛んで差し上げますわ」
「じょ〜だん、言ったでしょ。ここにいる衛宮士郎は私の弟子なの。師匠の私がフォローするのが当然ってもんでしょうが」
「聞けませんわ。ミスタ・エミヤは当家の使用人。当主たる私がその身を預かるのが筋というものですわ」
「なんですって」
「なんですの」
「あ〜もう、なんですぐ言い争いになるだ。そんな事してる場合じゃないだろう」

 さすがにここに至って口論を繰り広げる二人に士郎が声を荒げた瞬間、二人ともピタリと黙りこんだ。

「……ねえ、士郎?」
「何だよ」
「本当におわかりになりませんの、今の状況が?」
「い、いや、わかってるよ。ほら、警官隊は来てるし、早くどうにかしないとこのままじゃ三人とも警務所送りになるぞ」

 暗く、強くこちらを責めるような強い二つの視線と声のプレッシャーに半歩後ずさりながら、士郎でも何故だがわからないが言い訳めいた事を言ってしまう。だが、その答えもどうやら二人にはお気に召すものではなかったようだった。

「……こういう奴なのよ、士郎は。悪い事言わないから止めときなさい」
「まあ、何となくはわかっていましたが。これほどまでとは……」
「なんでさ?」

 まるで自分達こそ被害者だと言わんばかりに心の底から呆れた様子で、溜息をつく二人に士郎は思わず抗議の声を上げた。まさにその瞬間、下から岩を砕く音を士郎は捕らえた。考えるまでもない最後のバリケードがついに破られたのだ。

「ここはもう駄目ね。士郎行くわよ」

 その事実に凛も意を決したように窓枠に足をかけて、士郎に今一度手を伸ばした。

「お、おまちなさい」

 ルヴィアの静止など聞く間もなく。追撃を断つため魔石を一つ投げ捨て、凛は自分の伸ばした右手がしっかりと柔らかい感触を捕まえている事を感じて、思い切りよく外に飛び出した。
 空を切り裂いて落ちていく二人。地上から巻き起こる悲鳴のような歓声、全身に受ける風はすぐに解き放たれた魔術によって緩和された重力によって弱くなる。その結果に満足して、凛が振り向いた瞬間彼女の中だけで世界がまさに停止した。

「へっ?」

 凛の視界を覆ったのは、自ら光を放っているような金色の波だった。凛の右手は、何故か士郎のものではなくルヴィアの手がしっかりと握っていた。
 士郎はその一連の光景を茫然と見下ろしていた、ただ一人ロンドン塔の中で。そして、その足元には先ほど凛が投げた魔石が怪しい光を放ち転がっていた。

「……なんでさ?」

 その日、倒壊したホワイトタワーの砲塔の最上段で、切実な疑問をのせた日本語の呟きは崩れ落ちる石壁に押しつぶされたのだった。

  ・・・・・・・

 ロンドン塔から程近い病院の個室。
 病室に据えつけられている小さなTVに映っているニュースではトップで「ロンドン塔一部崩落、テロによる可能性?」というテロップと共に、崩れたロンドン塔の映像が流れていた。

「……不幸な事故ね」

 遠坂凛が、そのニュースを見ながら、顔をひきつらせながらもはっきりとそう断言した。

「……ええ、不幸な事故でしたわね」

 それに答えるように、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが右手を震わせながら頷く。
 ちなみに、その震える右手には3流タブロイド紙が握られていた。タブロイド紙は棒状になっているため、彼には確認できないがその一面には「突如、崩壊したロンドン塔の怪。犯人はメリー・ポピンズ?」という見出しと、不鮮明ながら確かに誰かがロンドン塔から飛び降りていく姿が写った写真が掲載されていた。

「事故っていう事は、天災みたいなものだし水に流さない」
「そうですわね。事故ですもの、責任を追及してみても始まりませんから」

 二人はあくまで視線をTV画面に固定したまま同時に頷いた。

「……二人共、それで済ませるつもりなのか?」

 目の前で、勝手に話を纏め括ったあかいあくまとあおいあくまに、ベットの上からこの部屋にもう一人の人物、つまりはこの病室の主である衛宮士郎が精一杯の抗議の声を上げた。
 彼は幸か不幸か、あの後もっとも被害の大きい被害者Aとして、救助されこの病院に搬送されていた。
 この二人組のテロリスト、もしくは8月のメリー・ポピンズが起こした事件そのものは、魔術協会によって何とか隠匿することに成功したらしい。もっとも、その代償として二人組が負うことになったペナルティも勿論軽いものではなかった。ちなみに、この一件のお蔭で凛のドキドキバカンス計画が頓挫した事は言うまでもないことかもしれない。

「あら、ミス・トオサカはそれで済ませるおつもりかもしれませんけど、私はそんなつもりはありませんわよ」
「「へっ?」」

 ふくよかな胸を誇らしげに張って、ルヴィアが堂々とそう宣言するかのごとく言った。その開き直り、ここに極まりといった風情のルヴィアに当然ながら凛と士郎が疑問を呈す。

「こうなったのも、あんな凶暴女の所に使いにやった雇い主である私のせい。これからは、ミスタ・エミヤが退院するまで私が特別看病して差し上げますわ」
「ちょ〜っと、待った。そんな必要はありませんわ、ルヴィアさん。何といっても、ここにいる衛宮士郎は私の弟子ですから。私が面倒を見ますのでど〜ぞお帰りください」

 頬を少し赤らめ寝ている士郎の横に寄り添おうとしたルヴィアの動作を、すかさず凛が体ごと間に入り阻止した。
 瞬間、士郎は確かにルヴィアと凛の間であるはずもない赤色と青色の導火線が交わり火花が咲いたのを確かに見た。

「い〜え、そういう訳にはいきませんわ。ここにいるミス・エミヤはうちの執事ですもの、エーデルフェルト家の誇りをかけてここは譲れませんわ」

 声は平静、寧ろ微笑すら含んでいるだが、ルヴィアの右腕が小刻みに震えながら青白い光を放ち始めているのが、士郎にははっきりとわかってしまう。

「あら、ハイエナ貴族に誇りなんてあるのかしら」

 声は平静、というより上から相手を見下すような侮蔑を含んだ笑みすら含んでいるのだが、凛の右腕が小刻み震えながら赤い光を放ち始めているのを、士郎が見過ごせる訳もなかった。
 二人は、一度見詰め合いさもおかしい事があったかのようにひとしきり、それこそ親しさすら感じさせる笑い声を上げた。
 ……カタストロフィだ、と士郎は一人血の気の一切が抜け落ちた顔で断じた。どうして、こんな事になるんだ? と、士郎は考える。だが、もちろん答えは出ない。その答えが出ない事、そのものが事の本質である事に彼は未だに気がつく様子もない。
 無論逃げる事などできようはずもなく、何とかせねばと口を開けかけた瞬間唐突に二人の笑い声が止み、明らかに装いを変えた雰囲気だけがその場に残された。

「言いましたわね、ミス・トオサカ。この辺境の自称魔術師ごときが」
「ルヴィア。吐いた唾はもう飲み込めないわよ」
「あなたらしく、汚い比喩ですこと。ですが、それはこちらも同じ事ですわよ。手袋を受ける覚悟はありまして」
「上等。100枚でも200枚でも持ってきなさいよ」
「ちょ〜っと待て、二人共。ここ病院だぞ、病院」

 めらめらとそれぞれの背後に浮き上る赤い炎と青い炎に、ようやっと士郎が割って入ろうしたがそれは残念ながら開幕のベルを打ち鳴らしただけの効果しかなかった。

「「問答無用」」
「ぎゃあぁぁぁあ」

 そして、今日もまた所を変えて日本人男性の悲鳴と爆発音が8月の美しい空に盛大に鳴り響いたのだった。
 ……こうして、再び悲劇が繰り返された訳だが、この病院に血なまぐさい因縁があったわけでは勿論ない事だけは明記しておこうと思う。

                                                完


 後書き

 どうも、四度目のFateSSです。
 前回前前回と自分で言うのも何ですが、一体このSSは何が言いたいねん。 というSSになってしまいましたので、今回はできるだけ私のアホ解釈はやめてシンプルな話にしたつもりです。
 あと、アクションというかバトルをしっかりと書けるようになれば、もう少しはましなものになるような気がしますがなかなか上手くはいきません。まあ、毎度の事ですが。
 読んでいる時や、読み終えた折にくすりとでも笑いを誘うことができましたらこれに勝る喜びはございません。
 蛇足としておまけに二本ショートショートを用意しましたので宜しければお好きな方お選びください。
 それでは、次回がありましたらまた〜。

 追記 

  ロンドン塔の表記がタイトルだけ漢字なのは、ただ単にタイトルを漢字で統一したかっただけなので、特に意味はありません。あしからず……



ルヴィアさんサイド  おまけ  遠坂さんサイド
宜しければお好きな方お選びください。